『舟を編む × 辞書出版社11社タイアップ』第五回「集英社国語辞典」プレゼント企画に寄せ、集英社 学芸編集部 辞書担当様より寄稿を頂きました

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タイトル:集英社国語辞典について


歴史

『集英社国語辞典』は1993年に第一版を刊行。その後2度の改訂をおこない、
2000年に第二版、現在は2012年改訂の第3版を発行しています。

 第一版刊行からすでに20年以上を経て、いま弱冠(二十歳)を若干越えたところ。
伝統ある老舗辞書があまた燦然と輝くこの世界では若くて新しい国語辞典です。


編集方針

 第一版刊行時のスローガンは「新しい時代に新しい辞典を!」でした。
ことばの規範的な面(語源や本来の意味)を押さえつつも、記述的な面(現在どんな意味でどう使われているか)をも
重視した語釈を採用し、現代生活に役立つ辞典づくりを目指しました。

 たとえば、もともとは寒さや恐怖を表す「鳥肌が立つ」という表現に、
「感動で鳥肌が立つ」といった現代的な用法をはじめて辞書に採録したのは1993年刊行の『集英社国語辞典』第一版です。

 ただし、時代の変化とともに辞典のありように対する編集部の考え方もすこし変わりました。
辞書の電子化の流れにともない、新語や新しい用例の採録が容易になり、
紙の辞書では実現できない軽量化も可能になりました。
が、一方で紙の辞書を望む方々も、こんにち少なからずいらっしゃいます。

 そこで、第一版以来の編集方針を継承しつつ、
毎日の生活のなかで「使い勝手のいい紙の辞書」を追求したのが現在の第3版です。
(ささいなことですが、編集部では、第一版・第二版は漢数字で、第3版は算用数字で表記するのを習慣にしています)

特色

「国語辞典+漢字字典+百科事典の3つの要素が1冊に!」が第3版のキャッチフレーズです。
その特色は以下のとおりです。

◆ B6判で総ページ2000ページあまりという、紙の辞書として簡便に使いこなせるサイズの極限にチャレンジしています。

◆ 現代生活に役立つ辞典という観点から、ことばの意味を知る国語辞典の要素だけでなく、
簡易な漢和辞典の要素、人名・地名・歴史事項などの百科事典の要素を1冊にまとめました。
B6判の国語辞典で固有名詞などの百科項目を収録しているのは『集英社国語辞典』だけです。

ほかにもセールスポイントはいろいろありますが、
うざい(もちろん『集英社国語辞典』にはこのことばも収録されています)と思われるのもなんなので、この程度に。


制作秘話

『集英社国語辞典』には編集委員(編者)が5名おり(うち2名はすでに故人)、
役割分担はあるものの職制上の序列はなく、原則として編集委員の合議ですべて決定します。
そのためスタート当初は、議論が白熱して、編集スタッフがヒヤヒヤする場面もあったそうです
(当時を直接知るスタッフはもはや編集部におらず、したがって伝聞です)。

◆ スタート時(1993年刊の第一版の編集作業は1980年代から始まっていました)は
編集委員の先生方も若く血の気も多かったので(?)、意見の相違からあわや摑み合いのケンカに
なりかけたこともあったとか。さすがに編集部内で殴り合いをすることはなかったようですが、
作業後ちょっと飲みにいったりしたお店では......?

◆ スタッフの書いた原稿を編集委員がチェックし訂正で原稿が真っ赤になることは珍しくありません。
が、あるとき編集委員のA先生が同じ編集委員のB先生の原稿を読んで真っ赤にしてしまい、
周囲のスタッフは真っ青(!)になったとか。いうまでもなく原因は「見解の相違」にあったので、
このときは担当執筆者のB先生の見解を尊重し、A先生には納得していただいたそうです。

いまでは編集委員の先生方も好々爺(?)となられましたが、いずれも一家言お持ちの方々であることは事実です。

逸話・都市伝説など

 これも昔の話ですが、朝出勤すると、前日入れた覚えのない赤字訂正がゲラに入っている、
そんなことがたびたびあったそうです。もしやスタッフが帰宅したあとの深夜の編集部に
「校正者のユーレイ」が出現!? しかし実際は、当時の編集スタッフのひとり
(ちょっと神経質な人だったのかもしれません)が退社後もゲラの内容が気がかりで、
いても立ってもいられず、誰もいない編集部に戻ってきてはゲラに手を入れていた、というのが真相でした。

 たわいない話ですが、昔はそんな話もあったとか。いまは当時と仕事内容も様変わりし、
パソコン相手の作業が増え、どうも都市伝説とは無縁な日常です。

集英社 学芸編集部 辞典担当


(じしょたんず海くんが、集英社様にプレゼント本を頂きに行ったときの様子)
おっきなたてものでびっくりちゃった。

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